何だろう? 科学の広場

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14.縦型風車の風力発電所(09/12/19)

 普通の風力発電所では敷地の中に、おなじみの、水平な回転軸のプロペラ形の風車(横型と呼びましょう)を互いにかなり離して並べて立てます。この型の風車は単独では効率が良いのですが、互いにあまり近づけて立てると,一つの風車の回転でできる空気の波が隣の風車の回転を妨げるからです。これを防ぐには隣の風車まで、横には羽の直径の3倍,前後には10倍(直径100mなら1km!)以上離さねばなりません.ですから、出力が大きな発電所には非常に広い敷地が必要です。
 しかし,横型風車ほどおなじみではありませんが、鉛直(地面に垂直)な回転軸の風車(縦型風車と呼びましょう。)があります。この型の風車では何枚か(一枚の場合もあります)の羽がこの軸の周りに、ビルの回転ドアのように、水平に回ります。羽の形はいろいろです(出典のサイトを見ると一例の写真が出ています)。この型の風車は、ちょっと考えれば分かるように、どの羽も軸の周りを一回転する間に風が押す方向に逆らって動く時期があるので、横型の風車より効率が悪く、従ってポピュラーではありません。
 しかし、風力発電所に使うと横型風車よりずっと得なことがあります。それは、横型風車の場合と逆に、風車同士を非常に近くに置くと出力が増すということです。
 アメリカのカリフォルニア工科大学のRobert WhittleseyとJohn Dabiriは縦型風車を使えば風力発電所の風車の間の距離をずっと小さくできることを見つけました。彼らは、魚が群れになって泳ぐとき、直ぐ前を泳ぐ魚がつくる渦が後ろの魚を前に引っ張ることでネルギーを節約しているという事実(1970年に航空力学の技術者Daniel Weihsが見つけました)に目をつけ、それが風車発電所にも使えないかということを計算機を使って理論的に研究しました。その結果分かったことは、縦型風車の場合は風車同士を近づけると風車の回転速度が単独で立っている時よりも遥かに大きくなる場合があることでした。彼らは縦型風車を図のようにジグザグ形に並べ、風車の回転の向きを交互の列で反対にすると風車の回転速度が非常に増すということを見つけました。これは隣に風車があることによって風が集中して回転を加速するからだ、と彼らは言っています。
風車の配置図
 彼らはこのような配置の風力発電所は従来の横型のものに比べて単位面積当たり100倍の出力が出ることを見つけました。Whittleseyは、このような風力発電所はイギリスや日本のように風は十分あるが広い場所がとれない国にとっては魅力的だろう、また従来型にくらべて風車間を接続するための装置の費用はより少なくてすむだろう、もっとも風車の数がふえるから全体的に経済的かどうかはわからないが、と言っています。
 出典:http://physicsworld.com/cws/article/news/40993より。
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13.癌細胞を捕まえるわな(09/07/29)

 癌の転移は癌細胞が腫瘍から離れて体の中を動き回ることによって起こります。それがどのようにして動くのかを理解すれば新しい療法を見つけたり、癌細胞を捕まえて動けないようにすることが出来るかも知れません。
 アメリカのノース・ウェスタン大学のグルジボウスキ(B. Grzybowski)のチームが、細胞が微小なせまい通路の中を動く仕方が細胞の種類によって違うことを利用して、癌細胞とそうでない細胞を分けることが出来ることを見つけました。
 このチームは金の表面にエッチングで一辺50ミクロン(100分の5ミリ)の微小な同じ向きを向いた三角が一列に並んだような形の通路を作りました。通路の方向は三角の底辺に垂直です。一つ一つの三角は頂点の先が小さく切れて開いており、底辺には孔が開いていて、いわば底に孔が開いた(平面状の)漏斗の様な形をしています。一つの漏斗の先端は並んでいる隣の漏斗の底辺の孔につながっていて、そこがその二つの漏斗の間の狭い通路になっています。
 彼らはこの通路の中を2種類の癌細胞と1種類のそうでない細胞が動く様子を観察しました。すると、どの種類の細胞も三角の底辺から先端の向きに動いて行き、その反対の向きには動いて行かないということがわかりました。
 そのわけを知るために、チームは、顕微鏡の連続写真をとって細胞の動きを詳しくしらべました。その結果次のことがわかりました。三角漏斗の一つに入った細胞はアクチンという蛋白質でできた繊維をその三角漏斗の三つの隅まで伸ばして,その形を探ります。すると、三つの角のうち一つが開いていて、そこを通りぬけて隣の三角漏斗に行けることに「気づき」ます。すると、細胞はその中にアクチンの突起を伸ばし、それを隣の三角漏斗の底辺とその両端に固定して細胞の残りの部分を引っ張り込みます。こうして細胞全体が次の三角漏斗に移るのです。時々突起が逆方向に伸びることもありますが、どこにもそれを固定する場所がないので、細胞がその方向に動くことはありません。細胞が三角漏斗を一つ移動するのに数時間かかります。あとはその繰り返しで細胞はこの通路の中を一方向に動いて行くのです。
 どの種類の細胞もこのやり方で通路の中を動いて行くのですが、癌でない細胞は癌細胞よりはるかに長い突起を――時には二つ先の三角漏斗にまで――伸ばすことに研究チームは気づきました。そしてこのことを利用して癌細胞とそうでない細胞をより分ける第二の型の通路を設計しました。
 この第二の型の通路には30ミクロン(100分の3ミリ)の出っ張りが通路の両側の交互の側についています。癌でない細胞の突起は細くて長いので、それを伸ばして出っ張りにつかまり,細胞を反対の方向に引っ張ることができます。しかし、癌細胞の突起は幅が広くて短いので,それが出来ず、第一の型の通路の場合のように、通路を一方向に動くことしかできません。
 研究チームは、これを彼らが「癌のわな」と呼ぶ装置の開発に利用できるのではないかと考えています。それは同心円状に第二の型の通路を置いたもので、癌細胞を中心部分に永久につかまえてしまう装置です。グルジボウスキは何時の日かこのような通路を腫瘍の近くに埋め込み、転移しようとする癌細胞をより分けて捕まえることが出来るようになり、「物理的な原理によって癌の転移と戦う新しくて非常に強力な道具になるかも知れない」といっています。
 単細胞生物の研究をしているヴァーモント大学のヒル(J. Hill)はこの研究を歓迎しています。「ほとんどの生物学者は閉じ込められた細胞の運動の研究は重要だと思ってきませんでした。これまでの生物化学的研究では細胞の物理的環境の影響を考慮してこなかったからです。この研究は体の中で細胞の種類によって運動し易い形というものがあるかどうかについても洞察をあたえます。」と話しています。
 出典:physicsworld.com (Week 26, 2009)より。
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12.ナノチューブを使った新型スピーカー(09/05/16)

 ナノチューブ(注参照)を使った全く新しいタイプのスピーカーを中国の精華大学と北京教育大の研究者達が発表しました。彼らは6年前に彼らが開発した特殊な技法を使ってナノチューブのうすいフィルムをつくりました。その厚さはわずか数10ナノメートル(10億分の数cm)ですが幅は10cmもあり、透明で、電気的には抵抗だけがあり、電気容量やインダクタンスはありません。その端に電極を付けて交流電流を流すとフィルムからは普通のスピーカーと同様な大きさの、澄んだ音がでるので、スピーカーとして使えます。その上、フィルムは柔軟ですから、このナノチューブ・スピーカーはどんな形にもできるし、曲面状の基盤の上にも取り付けられます。たとえば直径、高さともに数cmの円柱状にすると、円柱の周り360度の方向に音が出るスピーカーができます。フィルムを引き伸ばしても音質が低下しません。
 研究者によると、音はフィルムの振動によるのではなく、100年前に提唱された、熱音波と呼ばれるものによるものです。フィルムの中を電流が流れるとフィルムは熱せられて温度が上がります。フィルムの単位面積当たりの熱容量は非常に小さいので電流が変化するとそれに応じてフィルムの温度が変化し、それが周りの空気の中に圧力の波を起こします。つまり音が出るのです。このメカニズムは電流の向きには依らないので、そのままだとフィルムの振動数は電流の振動数の2倍になってしまいます。しかし、この欠点は一定のバイアス電流を流しておくことで克服できます。(文献:L. Xiao その他、Nano Lett., in press, doi:10.1021/nl802750z.)
 出典:Physics Today November 2008より。
 (注)ナノチューブというのは炭素の原子でできた半径がナノメートル(1兆分の1メートル)単位の非常に細い管(チューブ)のことです。NEC基礎研究所の、飯島澄男主席研究員(現在名城大教授兼任)が発見しました。現在ではそれを使った技術(ナノテクノロジー)が大発展をしています。(編集部)
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11.蜘蛛やヤモリはなぜ垂直な壁を登れるのか?(08/11/18)

 蜘蛛やヤモリは殆どどんな種類や傾きの壁でも登ることができます。なぜでしょう?

 ドイツ・ブレーメンの動物・生物工学研究所のAntonia Keselとスイス・チューリッヒの共同研究チームは電子顕微鏡を使って、網を張らず獲物に飛びつく蜘蛛の一種、E. arcuata、の足を観察しました。すると、その足の裏には毛の房がついており、その毛の一本一本がまた何十万本もの、幅が数百ナノメートル(1億分の数メートル)の小さな毛で覆われていました。(文献:A Kesel その他、 2004 Smart Mater. Struct. 13 512) この小さな毛はセチュールと呼ばれています。蜘蛛はこのセチュ−ルを使って物にくっつくのです。
 Keselのチームは原子力顕微鏡を使って、一本のセチュールが40ナノニュートン(10億分の4ニュートン)の粘着力を出せることを見つけました。これは蜘蛛の体重が15ミリグラム位しかないことを考えると非常に大きな力です。この粘着力の元はセチュールの中の分子と物体の中の分子の一つ一つの間に働く力(注参照)によるもので、蜘蛛の八本の足にある莫大な数のセチュールにはたらく力が合わさるとそのように強い力が出るのだとチームは考えています。チームの計算によれば、もし蜘蛛一匹で60万本のセチュールの先が物体の表面にくっつくとすれば0.025ニュートンの力が出ます。これは蜘蛛の自重の173倍に当たります。しかもこの力は周りの環境によって左右されないので、蜘蛛は濡れた表面や滑りやすい表面を平気で歩くことができるのです。
 出典:http://physicsweb.org/article/news/8/4/9より。
 (注)この力は分子の中の電子のマイナスの電荷と相手の分子の中の原子核のプラス電荷の間に働く引力によるもので、ファン・デア・ワールス(van der Waals)の力と呼ばれています。(編集部)

 ヤモリの場合は、その足に50万本ほどの毛が規則正しく、森のように生えており,その一本一本の毛の先端はさらに細かい数百本のヘラ状に別れています.それが物体の表面に触れると、蜘蛛の場合と同様に、そのヘラの分子と物体の表面の分子の間に働くファン・デア・ワールスの強い力で足が物体の面にくっつくのです.蜘蛛やヤモリの足の付着力はほかの節足動物(昆虫や甲殻類など)が粘液を出して物の表面にくっつく力にくらべてはるかに強力です。
 科学者たちは何年もの間、蜘蛛やヤモリの様に、壁でも窓でも殆ど何でも登れるロボットを作ろうとして失敗してきました。しかし,このたびアメリカのジョージア工業大学のZhong Lin Wangの率いるチームがエチレン−水素―アルゴンの蒸気をシリコンの土台の上に化学的に付着させて、少なくとも見かけ上、ヤモリの足と似た構造を作りました。土台の上に鉄の触媒を入れ、温度と付着の時間を制御すると、台から垂直に立った先がぼやけたナノチューブの列ができました。それをガラス、紙やすり、プラスチックにくっつけるテストをしたところ、その粘着力は1平方センチ当たり100ニュートンで、これはヤモリの足が生み出す粘着力よりほぼ一桁大きいことがわかりました(Science 322 238)。これはその材料の4 × 4平方mmで1.5Kgの本を吊り上げることが出来る強さです。
 出典:http://physicsworld.com/cws/article/news/36185より。
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