11.蜘蛛やヤモリはなぜ垂直な壁を登れるのか?(08/11/18)
蜘蛛やヤモリは殆どどんな種類や傾きの壁でも登ることができます。なぜでしょう?
ドイツ・ブレーメンの動物・生物工学研究所のAntonia Keselとスイス・チューリッヒの共同研究チームは電子顕微鏡を使って、網を張らず獲物に飛びつく蜘蛛の一種、E. arcuata、の足を観察しました。すると、その足の裏には毛の房がついており、その毛の一本一本がまた何十万本もの、幅が数百ナノメートル(1億分の数メートル)の小さな毛で覆われていました。(文献:A Kesel その他、 2004 Smart Mater. Struct. 13 512) この小さな毛はセチュールと呼ばれています。蜘蛛はこのセチュ−ルを使って物にくっつくのです。
Keselのチームは原子力顕微鏡を使って、一本のセチュールが40ナノニュートン(10億分の4ニュートン)の粘着力を出せることを見つけました。これは蜘蛛の体重が15ミリグラム位しかないことを考えると非常に大きな力です。この粘着力の元はセチュールの中の分子と物体の中の分子の一つ一つの間に働く力(注参照)によるもので、蜘蛛の八本の足にある莫大な数のセチュールにはたらく力が合わさるとそのように強い力が出るのだとチームは考えています。チームの計算によれば、もし蜘蛛一匹で60万本のセチュールの先が物体の表面にくっつくとすれば0.025ニュートンの力が出ます。これは蜘蛛の自重の173倍に当たります。しかもこの力は周りの環境によって左右されないので、蜘蛛は濡れた表面や滑りやすい表面を平気で歩くことができるのです。
出典:http://physicsweb.org/article/news/8/4/9より。
(注)この力は分子の中の電子のマイナスの電荷と相手の分子の中の原子核のプラス電荷の間に働く引力によるもので、ファン・デア・ワールス(van der Waals)の力と呼ばれています。(編集部)
ヤモリの場合は、その足に50万本ほどの毛が規則正しく、森のように生えており,その一本一本の毛の先端はさらに細かい数百本のヘラ状に別れています.それが物体の表面に触れると、蜘蛛の場合と同様に、そのヘラの分子と物体の表面の分子の間に働くファン・デア・ワールスの強い力で足が物体の面にくっつくのです.蜘蛛やヤモリの足の付着力はほかの節足動物(昆虫や甲殻類など)が粘液を出して物の表面にくっつく力にくらべてはるかに強力です。
科学者たちは何年もの間、蜘蛛やヤモリの様に、壁でも窓でも殆ど何でも登れるロボットを作ろうとして失敗してきました。しかし,このたびアメリカのジョージア工業大学のZhong Lin Wangの率いるチームがエチレン−水素―アルゴンの蒸気をシリコンの土台の上に化学的に付着させて、少なくとも見かけ上、ヤモリの足と似た構造を作りました。土台の上に鉄の触媒を入れ、温度と付着の時間を制御すると、台から垂直に立った先がぼやけたナノチューブの列ができました。それをガラス、紙やすり、プラスチックにくっつけるテストをしたところ、その粘着力は1平方センチ当たり100ニュートンで、これはヤモリの足が生み出す粘着力よりほぼ一桁大きいことがわかりました(Science 322 238)。これはその材料の4 × 4平方mmで1.5Kgの本を吊り上げることが出来る強さです。
出典:http://physicsworld.com/cws/article/news/36185より。
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